効率的な投稿戦略
分野ごとの国際会議・論文投稿戦略のヒント
投稿戦略の概要
国際会議やジャーナルへの論文投稿は、研究者にとって重要な活動です。
ここでは、分野ごとに時期ごとの大まかな戦略、投稿先の優先順位、リジェクト時の対応など、効率的な投稿を行うためのヒントをまとめます。
自身の研究分野やキャリアプランに合わせて、最適な戦略を立てる際の参考にしてください。
💡 効率的な投稿戦略
- 年間スケジュールを立てる: 複数の学会を視野に入れ、締切を逆算して研究を進めましょう
- リジェクト→次の学会へ: 1つの学会でリジェクトされても、フィードバックを活かして次の締切に向けて改善
- Tier A*を狙う: 採択率は低いですが、キャリアへの影響は大きい。挑戦する価値あり
- アブスト締切に注意: ICML、IJCAIなどはアブストラクト締切が先にあります
機械学習分野の投稿戦略
機械学習分野は進化が速く、主要な国際会議(NeurIPS, ICML, ICLR, KDDなど)への投稿は競争が激しいです。
以下の戦略を参考に、効果的な投稿を目指しましょう。
- Q1 (1-3月): 基礎研究や理論的な進展は、この時期に締切がある会議(例: ICLR)を狙う。
- Q2 (4-6月): 実験結果が固まってきたら、応用寄りの会議(例: ICML, KDD)を検討。
- Q3 (7-9月): 新しいアイデアや速報性のある結果は、ワークショップやジャーナルへの投稿も視野に入れる。
- Q4 (10-12月): 年末の締切に向けて、大規模な実験や既存手法の改良に取り組む。
- 優先順位: まずはトップカンファレンス(NeurIPS, ICML)を目標にし、リジェクトされた場合はフィードバックを元に次の会議(AAAI, IJCAIなど)へ再投稿を検討する。
画像処理分野の投稿戦略
画像処理分野は、コンピュータビジョンと密接に関連し、深層学習の発展により急速に進化しています。
主要な国際会議(CVPR, ICCV, ECCVなど)への投稿戦略を以下に示します。
- Q1 (1-3月): 新しい画像認識モデルや生成モデルの提案は、この時期の会議(例: CVPR)を狙う。
- Q2 (4-6月): 大規模なデータセットを用いた実験結果や、既存手法の性能改善は、ICCVやECCVを検討。
- Q3 (7-9月): 特定の画像処理タスク(例: 超解像、セグメンテーション)に特化した研究は、専門ワークショップやジャーナルへの投稿も視野に入れる。
- Q4 (10-12月): 年末に向けて、理論的な側面を強化した研究や、新しい応用分野の開拓に取り組む。
- 優先順位: CVPR, ICCV, ECCVといった主要会議を目標にし、リジェクト時は、フィードバックを元に次の会議やジャーナルへの再投稿を検討する。
ロボティクス分野の投稿戦略
ロボティクス分野は、ハードウェアとソフトウェアの融合が特徴であり、実験結果の重要性が高いです。
主要な国際会議(ICRA, IROS, RSSなど)への投稿戦略を以下に示します。
- Q1 (1-3月): 新しいアルゴリズムやシステム提案は、理論的な側面を強調しつつ、この時期の会議(例: RSS)を狙う。
- Q2 (4-6月): 実機での検証が完了したら、実用性や応用例を示す会議(例: ICRA)を検討。
- Q3 (7-9月): 大規模な実験データやベンチマーク結果は、この時期の会議(例: IROS)で発表する。
- Q4 (10-12月): 年末に向けて、長期的なプロジェクトの成果や、より洗練されたシステムを発表する準備を進める。
- 優先順位: まずはICRA, IROSといった大規模会議を目標にし、リジェクトされた場合は、専門分野のワークショップやジャーナルへの投稿も検討する。
HCI分野の投稿戦略
HCI分野は、ユーザー体験やインタラクションデザインに焦点を当て、多様な研究手法が用いられます。
主要な国際会議(CHI, UIST, CSCWなど)への投稿戦略を以下に示します。
- Q1 (1-3月): 新しいインタラクション技術やプロトタイプの提案は、この時期の会議(例: CHI Late-breaking Work)を狙う。
- Q2 (4-6月): ユーザー調査や評価結果がまとまったら、フルペーパーとしてCHIやUISTを検討。
- Q3 (7-9月): 社会的側面や協調作業に焦点を当てた研究は、CSCWなどの会議を視野に入れる。
- Q4 (10-12月): 年末に向けて、長期的なユーザー研究や理論的考察を深める。
- 優先順位: CHIを最優先とし、UISTやCSCWなど専門性の高い会議も検討する。リジェクト時は、ジャーナルやワークショップへの再投稿を考慮する。
- コンピュータグラフィクスとの融合: SIGGRAPHはHCIとコンピュータグラフィクスの境界領域の研究発表に適している。特に、新しいインタラクション手法やVR/AR技術に関する研究はSIGGRAPHも視野に入れる。主要な論文締切は例年1月下旬から2月上旬頃。
セキュリティ分野の投稿戦略
セキュリティ分野は、攻撃と防御のイタレーションが速く、常に最新の脅威と対策が求められます。
主要な国際会議(S&P, USENIX Security, CCS, NDSSなど)への投稿戦略を以下に示します。
- Q1 (1-3月): 新しい攻撃手法や脆弱性の発見は、速報性を重視し、この時期の会議(例: NDSS)を狙う。
- Q2 (4-6月): 提案する防御策やシステムの実装・評価が完了したら、USENIX SecurityやCCSを検討。
- Q3 (7-9月): 大規模なデータを用いた分析や、理論的なセキュリティモデルの研究は、S&Pなどの会議を視野に入れる。
- Q4 (10-12月): 年末に向けて、長期的な脅威分析やプライバシー保護技術の研究を進める。
- 優先順位: S&P, USENIX Security, CCS, NDSSといったトップ4会議を目標にし、リジェクト時は、専門ワークショップやジャーナルへの投稿、あるいはより小規模な会議への再投稿を検討する。